『インファナル・アフェア』と『ディパーテッド』

文化比較の手法の一つとして、映画の翻案を比較する、という方法があります。
たとえば、黒沢明の『七人の侍』と、そのアメリカ版『荒野の七人』を比較することによって、日米の文化の違い、特に人間関係の違いを際ただせようとする試みです。
香港映画としてつくられたアンディ・ラウ主演の『インファナル・アフェア』と、そのハリウッド版のレオナルド・ディカプリオディパーテッド』は、どうでしょうか?
インファナル・アフェア』では警察側とマフィア側の、ボスと潜入者の擬似的な父子関係にもとづいた、アジア的な濃密なホモ・ソーシャルな世界が描かれています。これに対して、『ディパーテッド』では、ディカプリオの彼女の存在が強調されているせいで、『インファナル・アフェア』にあったホモ・ソーシャル性が薄まっていることに気がつくはずです。